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retroactive


過去事件へ適用「憲法違反でない」=時効撤廃・延長で千葉法相2010/2/26
 千葉景子法相は26日午前の閣議後の記者会見で、今国会に提出する犯罪の公訴時効撤廃・延長のための刑事訴訟法改正案に、施行時に時効が未完成の事件にも適用する規定を盛り込む方針であることについて、「新たに処罰規定を設けるのではなく、憲法違反には当たらない」と述べ、遡及処罰を禁じた憲法39条には抵触しないとの見解を示した。
 2005年に施行された改正刑訴法では、過去の事件への時効延長の適用は見送られた。今回は適用を認める理由について、法相は「時効で処罰を免れることが公平、公正なのか。社会の中に逃げ得を許さないとの声がある」と述べ、刑事責任の徹底追及を求める世論の高まりを考慮した結果だと説明した。 


本当に抵触しないのでしょうか?
ちなみにアメリカ連邦法では既に「死刑に当たる罪」は公訴時効にかからないそうです。

しかし,例えば15年前に殺人を起こした犯人が「25年で時効だからあと10年だ」という信頼(というにはおこがましいですが)を反故にするには,いささか議論が性急な気がします(もちろん加害者の犯した罪が許されないものであることは自明ですが)。
なぜこんなことを言うかというと,租税法の遡及立法の議題で,遡及処罰のアナロジーが大きな役割を果たしているからです。すなわち,「租税法の遡及については刑法と同じように考えられるよね。でも,とっても厳密な刑法よりは緩いよね。でも,行政法一般よりは厳しいよね」ってカンジのことです。
そしてそれは裁判所の判決にもあらわれています。

例えば,福岡地判平成20年1月29日(判時2003号43頁,判タ1262号172頁)

租税法規については,刑罰法規とは異なり,憲法上遡及適用を禁じる旨の明文の規定がないほか(憲法39条前段参照),適時適切な景気調整等の役割も期待されていることなどにかんがみると,租税法規不遡及の原則は絶対的なものではなく,租税の性質,遡及適用の必要性や合理性,国民に与える不利益の程度やこれに対する救済措置の内容,当該法改正についての国民への周知状況等を総合勘案し,遡及立法をしても国民の経済生活の法的安定性又は予見可能性を害しない場合には,例外的に,租税法規不遡及の原則に違反せず,個々の国民に不利益を及ぼす遡及適用を行うことも,憲法上許容されると解するのが相当である



確かに上の殺人の例は,論理的には「実行の時に違法であった行為でかつ,依然無罪とされた行為ではない」ので39条をクリアーしているという考え方も一方では成り立つでしょう。
しかし,他方,最初に述べた「あと10年だ」という予見可能性について,「新しく法律を作るのではないから,憲法論にはならない。何をしてもいいんだ」というのはShaviroの言う立法府の"scaling."ではないかと思います。

これが実際適用になるケース(例えば上の例だと殺人から25年を経過した後に逮捕された場合)では,被告側弁護士が「そもそも犯罪の公訴時効撤廃・延長のための刑事訴訟法改正が違憲だ」と,主張するのだろうなぁ。
それを裁判員が審理すると。そこでもやはり記事内の「世論の高まり」が幅を利かせるのでしょうか。

※言いたいことは,殺人犯の時効への予見可能性を守りたいということではなく,租税法が慎重に議論していた遡及という論点に,(間接的にですが)政治が介入してきたことへの懸念です。
「刑法すら間接的な遡及を政治マターで実現した。いわんや租税法…」というような,頼りの綱(遡及の刑法アナロジー)が揺らいでいる感とでもいうのでしょうか。
立法趣旨からすると,大騒ぎする必要はないと思っていますが。







日本国憲法第39条 何人も、実行の時に適法であつた行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問はれない。又、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問はれない。



第250条(公訴時効の期間)
時効は、次に掲げる期間を経過することによつて完成する。
一 死刑にあたる罪については二十五年
二 無期の懲役又は禁錮にあたる罪については十五年
三 長期十五年以上の懲役又は禁錮にあたる罪については十年
四 長期十五年未満の懲役又は禁錮にあたる罪については七年
五 長期十年未満の懲役若しくは禁錮又は罰金にあたる罪については五年
六 拘留又は科料にあたる罪については一年



アメリカ合衆国法典18編213章3281条 An indictment for any offense punishable by death may be found at any time without limitation.



日本国憲法第84条 あらたに租税を課し、又は現行の租税を変更するには、法律又は法律の定める条件によることを必要とする。

theme : 勉強
genre : 学問・文化・芸術

tag : 公訴時効 犯罪の公訴時効撤廃・延長のための刑事訴訟法改正案 アメリカ合衆国法典18編213章3281条憲法第84条 日本国憲法第39条

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大学卒業後、銀行・官庁勤務を経て、社会人大学院生となる。
環境問題にかかる税金や賦課金制度について研究しています。

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