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排出権取引(制度の整理)

 今日は,12月13日に開かれる,「なぜ排出権を取引するのか?」の講義に参加するための予習をします。

1.はじめに
(1)京都議定書
 1997年に採択された京都議定書は,主に先進国を対象(対象国を「付属書Ⅰ国」という)として温室効果ガスの国別削減目標を課しており,数値目標は2008年~2012年の5年間に対して適用される。削減の基準は1990年の温暖効果ガスの排出量であり,日本の目標は1990年比「マイナス6%」となっている。
(2)京都メカニズム(Kyoto Mechanisms)
 京都メカニズムとは,京都議定書において定められた,温室効果ガス削減をより柔軟に行うための「経済的」メカニズムであり,温室効果ガス削減の「補完的な措置」と評価される。日本などの国では,すでにエネルギー使用効率がかなり高く,これらの数値目標を国内のみで達成することは困難と言われており,また,効率改善の余地の多い国で取組を行ったほうが,経済的コストも低くなることから,他国内での削減実施に投資を行うことが認められている。この制度が京都メカニズムであり,対象国・活動の種類により,それぞれ「クリーン開発メカニズム」(CDM),「共同実施」(JI),国際排出量取引に分けられている。
 京都メカニズムを利用できるのは,先進国及び京都メカニズムへの参加資格を満たした事業者である。

2. 「クリーン開発メカニズム」(CDM:Clean Development Mechanism)
(1) クリーン開発メカニズムとは
 クリーン開発メカニズムとは,京都議定書第12条により,削減義務を負う先進国と削減義務を負わない国(主に途上国)の共同プロジェクトで生じた排出削減量(又は吸収増大)に基づき,クレジットを発行し,プロジェクト参加者間で分け合う制度である。
(2) 排出枠(CER)とは
 CDMで発行されるクレジットをCER(Certified Emission)という。京都議定書では,先進国が行ったCDMを制度化し,そこから生まれた排出枠(CER)の取引を認めている。その結果,先進国の総排出枠の量が増大するため,クレジット発行の審査は厳格である。 具体的には,第三者認証機関の指定運営組織(DOE)が,CDMプロジェクトがホスト国の「持続可能な開発」に寄与しているか,適正に温室効果ガスを削減するかなどCDMプロジェクトの的確性を審査する。
 現在,日本企業が行っている排出枠取引の対象はこのCERである。
CDMsetsumeizu.gif
(3)なぜ日本企業が排出権を獲得しているのか
①規制への対応
 2008年6月25日,東京都では環境確保条例の改正案が成立し,2010年度から,日本で始めて温室効果ガスの排出量削減が義務化され,排出量取引制度の導入が決定した。日本政府も国内排出権取引制度をはじめる可能性があり, CDM・JIによるクレジット獲得や,取引ノウハウを得ておく必要がある。
②CSR,広告宣伝
 CSR(Corporate Social Responsibility)とは企業の社会的責任のことであるが,「社会の持続可能な発展とともに,企業の持続的な価値創造や競争力向上にも結び付く」と考えられている。
排出権付き商品などはマスコミ報道され,投資(宣伝広告費)として考えることも出来る。
③転売
 他国においては地域単位の排出権取引市場はもう始まっており(後述),さらに東京都は世界規模の排出量市場の創設へ協調している。

3. 「共同実施」(JI: Disjoint Implementation)とは
(1) 共同実施とは
共同実施とは,京都議定書第6条により,先進国同士でプロジェクトを行い,その結果生じた排出削減量(または吸収増大量)に基づいて発行されたクレジットをプロジェクト参加者間で分け合う制度である。
(2) ERUとは
発行されるクレジットをERU(Emission Reduction Unit)という。ERUは排出枠として活用が可能である。なお,数値目標が設定されている先進国間での排出枠の取得・移転になるため,先進国全体としての総排出枠の量は変わらない。
CDMJItetsuzukizu.gif

4.「排出量取引」(Emissions Trading)とは
(1) 排出量取引とは
 排出量取引とは,京都議定書第17条により,各国の削減目標達成のため,先進国同士が排出量を売買する制度である。先進国合計の総排出枠の量は変わらない。市場メカニズムにより,目標達成のための全体費用を低下させることが可能となる。
(2)対象
 排出量取引で取得・移転が行えるものは,以下の4つである。
① 割当量単位(基準年排出量と数値目標から算定される初期割当量の一部)
②(先進国における)吸収源活動による吸収量RMU(Removal Unit)
③JIで発行されるクレジットであるERU
④CDMで発行されるクレジットであるCER
(3)条件
 排出権取引が行えるのは京都議定書の発行が前提である。京都議定書では,「ベースライン・アンド・クレジット」という仕組みに基づく制度として, CER等の取引を認めている。
※京都メカニズムの枠外ではキャップ・アンド・トレード(Cap & Trade)方式が採用され,EU ( EU-ETS ),イギリス( UK-ETS ),シカゴ( CCX )などで既に排出量(権)取引が試行されている。

5. 京都メカニズムの枠外とは
(1) キャップ・アンド・トレード(Cap & Trade)
 国や企業ごとに温室効果ガスの排出枠(キャップ)を割当て,枠を超えて排出した国(企業)と余っている国(企業)との間で排出枠を取引する制度。取引の結果,全体の排出量を一定の範囲内に収めることを目的としている。「キャップ・アンド・トレード(Cap & Trade)」とも呼ばれる。
排出量取引は,削減目標を確実に,しかも最小コストで達成するための手段として,各国で導入が進んでいる。排出量取引が有効とされる理由は,ある国(企業)が自ら温室効果ガスの削減対策を施すよりも,他の国(企業)から排出枠を購入した方が,コストを抑えられることがあるからである。温室効果ガスの削減コストは国や企業によって異なる。図の例では,1単位の温室効果ガスを削減するのに,A社は5万円で済むが,B社は100万円かかる。この場合,A社だけが2単位の削減を実施し,B社は対策を行わずにA社から1単位分の排出枠を55万円で購入すれば,A社は50万円の利益が得られ,B社は対策コストを45万円抑制できる。

0529ph1.jpg

 特定域内のCap & Trade方式の排出量取引としては,2005年に始まった「EU-ETS(欧州排出量取引制度)」が最大規模で,2006年の二酸化炭素(CO2)取引量は11億100万トンに達する。次いで,豪州の「GGAS(ニューサウスウェールズ州温暖化ガス削減スキーム)」の2000万トンが続く。温暖化政策に消極的だった米国も,オバマ次期大統領がCap & Tradeに積極的で,制度が立ち上がる可能性が高い。
 また,東京都はそのキャップ&トレードを採用して条例で排出削減を義務化したが,日本全体では電力,鉄鋼をはじめとする産業界の反対が強く,国内の排出量取引制度の導入には至っていない。反対の理由は,国際競争力が低下することへの懸念と,政府が企業に強制的に排出枠を割り当てる方式は公平性を欠く,というもの。このため日本での排出量取引の実績としては,自主参加型の排出量取引制度(JVETS)において,8万トンほど取引されただけである。

http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Keyword/20080520/303010/
http://www.suncarefuels.com/aboutcdmji.html
http://www.eic.or.jp/qa/?act=view&serial=9346
http://www.aimhighconsulting.com/weblog/archives/000450.html
http://www.kyomecha.org/about.html
http://www.doyukai.or.jp/whitepaper/articles/no15.html

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大学卒業後、銀行・官庁勤務を経て、社会人大学院生となる。
環境問題にかかる税金や賦課金制度について研究しています。

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