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排出権取引(論点の整理)

 制度の整理に続いて,論点の整理です。



1.外部不経済の問題点と内部化による克服
(1)例題
 漁場のそばに工場が建設された場合。
漁業者は工場の廃液により1,000万円の被害を受け,工場が廃液を浄化する設備の設置には500万円かかるとする。
設備設置によって全体利益は上がるが,漁業者と工場所有者が別人である場合,そうした配慮は働かない。設備を設置しない場合,工場は低コストで商品を生産し低価格で供給できるからである。しかし経済全体としては効率性が損なわれた状況である(外部不経済)。
 そこで,政府が工場から廃液税を500万円取り,設備を設置したとすると,工場は高コストとなり価格を引き上げざるを得ない。こうして工場の供給量は廃液汚染を考慮した最適な状態となる。これが内部化である。
(2)内部化としての排出権取引
 環境問題をはじめとする外部不経済を積極的に内部化しようとする試みの代表が二酸化炭素の排出権取引である。二酸化炭素を排出する企業は,その排出のコストを含めることになるため,全体として最適化が図られる。また,環境税などの取り組みも内部化にあたる。内部化を進めることで経済的に考慮された資源配分と生産が行われるようになる。環境を破壊するほどの力を持つ市場メカニズムや経済合理性を逆に利用するため,外部不経済を道徳や自主規制で解決しようとする試みよりも有力である。

2.ホットエアー問題
(1) ホットエアー問題とは
 ホットエアー問題とは,旧ソ連や東欧諸国が,基準年である1990年以降に経済停滞のため排出量が減少し,現在では削減努力なしに目標が達成できる上に,排出権取引に参加して利益を得ることが(他国から見て)不平等な状態であることと,この排出権が取引されても実質的に地球温暖化防止に貢献しない状態をいう。
 具体的にロシアは1990年の排出量に比べ,排出量が3割以上減少している。また,京都議定書におけるロシアの削減目標は0%なので減少分がすべて排出権の取引対象となる。
 なお,ロシアはホットエアー分を売却する意思はないとしているが,京都議定書批准国ではほとんどが目標達成が困難であるため,きわめて有効な外交カードになりえる。
(2)世界の1990年頃の状況とは
 基準とされる1990年は,西ドイツが東ドイツを統合し非効率な東ドイツのエネルギー事情を西ドイツの技術で改善し始めた時期。
 イギリスでは国内で大量に算出する石炭から北海油田,北海天然ガスへの転換が進められていった時期。
 フランスでは原子力への転換が進んできており,排出量は横ばい。
(3)日本の1990年頃の状況とは
 日本はオイルショック以来,高いレベルの省エネ技術を進展させ,工場生産におけるエネルギー消費量を極限まで削減し,同じ種類・量の製品を製造する場合のエネルギー使用量は諸外国と比べきわめて低いレベルを達成している。つまり,他国に比べてスタートである基準年の設定から不利な状況にある。
(4)日本の今後
 日本は現在,ポスト京都のスキームとして「セクター別アプローチ」を提案している。セクター別アプローチとは,国別の温室効果ガス排出削減目標を設定する際,産業や家庭,運輸など部門(セクター)ごとに削減可能量を算出し,その合計を国別の総量目標とする方法。各部門の削減可能量は,主要な産業分野や部門ごとに排出削減に有効な技術や制度を特定し,その導入を進めることを想定して算出する。「政治判断」で削減目標を義務付けた京都議定書とは正反対の考え方で,「積み上げ方式」とも呼ばれる。
 セクター別アプローチは,基準年までの排出削減努力が反映される公平な手法と評価され,省エネルギー技術が進んだ日本の削減目標は相対的に低くなると見込まれる。
(5)他国の反応は
 京都議定書で削減義務を負わなかった中国など途上国には,一律に削減目標を定める方法は経済成長を制限する可能性があることから,経済成長を考慮し,省エネ技術の導入促進も期待できるセクター別アプローチは受け入れやすいと考えられる。
 中国の胡錦濤主席は,同アプローチを地球温暖化対策の「重要な手段」と評価する共同声明を発表。
(6)新聞記事による最近の日本の動向

<海外からの排出権購入に7,000億円> 12月4日 毎日新聞
 京都議定書で日本が約束した温室効果ガスの削減義務を守るために,政府や産業界が海外から購入する排出権の総量はCo2換算で少なくとも約3億5,000万トン,現在の国際価格では約7,000億円に上る。国内の排出量は増加傾向にあり,削減が進まなければコストがさらにかさむ可能性もある。
 3億5,000万トンの内訳は電気事業連合会が1億9,000万トン,日本鉄鋼連盟が5,900万トン,政府も約1億トンを税金で購入する。排出権の国際価格は一時,1トン3,000円を超えていたが,金融危機の影響で現在は1トン2,000円前後。

<外国との排出量取引,東欧数カ国と基本合意へ=NEDO>12月3日 ロイター
 京都議定書に基づく排出量取引について,日本が現在交渉中のロシアやポーランドなど約10カ国のうち複数の国と近く,初めて基本合意する見通しが明らかになった。早ければ今年度中に最終合意する。
 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の清水康弘参事が2日,ロイターの取材に答えた。今後に関しては,排出量取引だけでなく他の京都メカニズムも活用し,温暖化ガス排出削減の目標を達成していきたいという。 
 京都議定書では,日本の温暖化ガスの排出削減目標は1990年比で6%。ただ,排出量は増大する傾向にあり,国内の努力だけでは達成が困難とされる。このため,日本の削減分として算入できる排出権獲得に向け,他国に排出権として売却できる余剰が生じている東欧諸国との間で交渉を進めてきた。日本は2008年から2012年までの5年間で排出権を計1億トン取得する方針。これまでは,途上国で温暖化ガス排出を減らすプロジェクトに投資し,見返りに排出権を得る「クリーン開発メカニズム」(CDM)の活用が多かった。
 日本が東欧の数カ国と基本合意する見通しの「排出量取引」は,具体的な環境対策と関連付けられた排出量取引の仕組みである「グリーン投資スキーム」(GIS)。東欧諸国は旧ソ連邦を中心に排出余剰枠を抱えている。
 CDMをベースにしたクレジット価格は,欧州連合(EU)域内のセカンダリー市場で1トン当たり13-14ユーロで取引されている。



http://www.business-i.jp/news/for-page/naruhodo/200805220010o.nwc
http://www.bekkoame.ne.jp/~mineki/gas2.htm
http://www.wwf.or.jp/activity/climate/world/kyoto/copmop4/index.htm
http://www.weblio.jp/content/外部性
http://itpro.nikkeibp.co.jp/article/Keyword/20080520/303010/
http://www.suncarefuels.com/aboutcdmji.html
http://www.eic.or.jp/qa/?act=view&serial=9346
http://www.aimhighconsulting.com/weblog/archives/000450.html
http://www.kyomecha.org/about.html
http://www.doyukai.or.jp/whitepaper/articles/no15.html

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「ポスト京都」原案、来年6月に COP14(朝日新聞 2008年12月9日)
京都議定書に続く2013年以降の温暖化対策を話し合う国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP14)で、温室効果ガス削減の次期枠組み(ポスト京都)の原案が、オバマ米次期政権が交渉に本格参加できる来年6月に示されることが明らかになった。ただ、来年12月の交渉期限まで6カ月で各国の意見をまとめねばならず、合意形成は難航しそうだ。
 米国はオバマ政権発足後、温室効果ガスの削減に向けた国内法整備と国際交渉の両面でブッシュ政権とは異なる対応で臨む構えだ。オバマ次期政権を支える米上院議員スタッフは、交渉が先行し議会の反対で批准できなかった京都議定書の二の舞いを避け、国内調整も並行して進めるとの見通しを示した。
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温室ガス削減目標、対立解けず COP14(朝日新聞 2008年12月4日)

COP14は、先進国と途上国の激しい対立が続いた。先進国が途上国を含めた世界全体の長期目標を求めたのに対し、途上国側は「先進国がまず中期目標を示すべきだ」と反発している。
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海面上昇や干ばつなどの影響に直面している途上国は、被害軽減策への先進国の支援が足りないとも非難した。ボリビア代表が、金融機関への先進各国の支援が巨額だったと批判し、「先進国は地球よりもウォールストリートの方が大事なのか」と発言すると、会場は拍手で沸いた。
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先進国全体の削減可能量や削減幅についての分析は、COP14で終えることになっていた。
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ドイツ、京都議定書の目標達成 温室効果ガスで2007年(朝日新聞 2008年11月30日)
ドイツの環境省は、2007年の温室効果ガスの排出量が1990年比で22.4%減となり、京都議定書で掲げられた21%減という目標値に達したことを明らかにした。同省によると、工業、交通などの分野で削減が進んだ。
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大規模な二国間取引

日経ネット2009.3.9

温暖化ガス排出枠3000万トン、ウクライナから 政府

 京都議定書で定められた温暖化ガスの排出削減目標の達成に向け、政府がウクライナから約3000万トンの排出枠を購入することが明らかになった。月内にも合意する見通し。日本が外国の政府から排出枠を調達するのは初めて。取得額は約300億円とみられる。政府は2012年度までに海外から1億トン分を取得する計画で、排出枠の価格が下がるなか、その3割を一気に手当てする。これまで例のない大規模な2国間排出量取引となる。
 景気低迷に伴う世界的な温暖化ガス排出量の減少などで、排出枠の価格は半年前の3分の1ほどに落ち込んでいる。政府は現在なら低コストでの調達が可能と判断した。
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大学卒業後、銀行・官庁勤務を経て、社会人大学院生となる。
環境問題にかかる税金や賦課金制度について研究しています。

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