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非正規雇用問題について(下)

 前回のエントリー←http://taxes.blog27.fc2.com/blog-entry-52.htmlにjump
において、派遣切りの定義を「自動車会社や電機メーカーなどで、派遣社員といわれる人がたくさんやめさせられること」と紹介しました。
 勉強のために、派遣労働者をとりまく法的関係についてもう少し詳しく検討します。
 参考サイト:厚生労働省
1.派遣労働者の法的関係
 派遣労働者が直接契約(有期労働契約など)しているのは派遣会社(派遣元企業)であり、自動車会社や電機メーカーなど(派遣先企業)は、派遣会社と契約(労働者派遣契約等)を締結しています。
 つまり
派遣労働者⇔派遣元⇔派遣先

という契約関係です。

2.労働者派遣契約
 派遣元と派遣先の契約は基本的に企業間の民事契約であることから、中途解除には行政機関は不介入です。しかし、派遣先が講ずべき措置に関する指針(平成11年労働省告示第138号)において、派遣労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を派遣先にも定めています(罰則規定なし)。
 一つ目は、派遣先は専ら派遣先に起因する事由により中途解除を行う場合、相当の猶予期間をもって派遣元事業主に解除を申し入れ、合意を得るというもの。
 二つ目は、派遣先は、契約期間満了前に派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって契約解除が行われた場合に、関連会社での就業あっせん等により、派遣労働者の新たな就業機会の確保を図るというものです。また、これに加えて厚生労働省のHP上では、就業機会の確保が出来ない場合は、「遅くとも30日前に予告し、予告しない場合は、派遣会社に派遣労働者の賃金相当分の損害賠償を行うこと」が派遣先が講ずべき措置とされています。
 そしてこの二つ目の規定についての実態調査が昨日発表されました。


[派遣切り]4割が再就職あっせんせず 1,806社調査
2月12日20時14分配信 毎日新聞(抜粋・再編集)

 厚生労働省は12日、失職者に対し派遣先が新たな就業機会の確保を図るなどとした厚労省の指針が約4割で実施されておらず、機会が確保された例は約6%にとどまるとの調査結果を公表した。
 調査は昨年10月~今年3月に派遣など非正規労働者への雇用調整の実施、実施予定を1,806事業所に任意で聴取し行った。
指針で定められた新たな就業機会の確保を図ったかの問いでは、
「図っていない」が44.4%で最も多く、次いで「努力したが確保できない」が37.9%。
雇用が維持、確保できた例は
▽「派遣元で(雇用)確保」(3.2%)
▽「関係会社などへあっせん」(1.7%)
▽「自社で雇用」(1%)だった。
 一方、非正規労働者が担っていた仕事については、「事業縮小で労働力の補充は必要ない」が58.8%で最も多かった。
 指針では、契約期間の中途で派遣解除する場合は、関連会社の就業先を探すなど新たな就業機会確保を図るよう派遣先に求めている。1月26日時点のまとめでは、非正規労働者の失職は約125,000人と見込まれ、うち派遣労働者は85,743人で中途解除は42,716人だった。
 調査結果について、江利川毅事務次官は「急速な経済の悪化はあろうが、事業者の責任はしっかり守ってもらいたい。雇用維持や職業訓練、雇用創出にさらに力を入れていく」と話した。


3.有期労働契約
 派遣労働者と派遣元は、一般に有期労働契約を締結しています。有期労働契約には、労働契約法17条による解雇制限と労働基準法20条による解雇予告が定められています。
(1) 労働契約法17条による解雇制限
 第1項では、「使用者は、期間の定めがある労働契約について、やむを得ない事由がある場合でなければ、その契約期間が満了するまでの間において、労働者を解雇することができない。」と使用者はやむをえない事由がなければ、期間途中で労働者を解雇できないというルールを定めています。
 第2項では、「使用者は、期間の定めのある労働契約について、その労働契約により労働者をしようする目的に照らして、必要以上に短い期間を定めることにより、その労働契約を反復して更新することのないよう配慮しなければならない。」と使用者の配慮義務を定めています。また、「有期労働契約の締結、更新及び雇止めに関する基準基準」(平成15年10月22日厚生労働省告示第357号)では、「使用者は、有期労働契約(当該契約を1回以上更新し、かつ、雇入れの日から起算して1年を超えて継続勤務している者に係るものに限る。)を更新しようとする場合においては、当該契約の実態及び当該労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするよう務めなければならない。更新する場合がある旨明示したときは、更新し又は更新しない場合の判断基準を明示しなければならない。」と定めていました。労働契約法はこの基準を法律上の配慮義務に反映させたといえます。
(2) 労働基準法20条による解雇予告
 第1項において、「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも30日前にその予告をしなければならない。30日前に予告をしない使用者は、30日分以上の平均賃金を支払わなければならない。但し、天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となった場合又は労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合においては、この限りでない。」と定め、30日前の予告(または日数分の手当ての支払い)を定めています。
(3) 派遣元が講ずべき措置に関する指針
 上記2法に加えて、派遣元が講ずべき措置に関する指針(労働省告示平成11年第137号)により、派遣元に対して派遣先と連動した配慮や労基法の遵守等が定められています。
 一つ目は、派遣元が派遣労働者を雇用しようとするときは、契約期間を労働者派遣契約における派遣期間と合わせる等、必要な配慮をするよう努めることとしています。
 二つ目は、派遣元が労働者派遣契約の期間満了前に派遣労働者の責に帰すべき事由以外の事由によって契約解除が行われた場合には、派遣先と連携して関連会社での就業のあっせんを受ける等により新たな就業機会の確保を図ること。また、労働者派遣契約の解除に伴い派遣元が派遣労働者を解雇する場合には、労働基準法等に基づく責任を果たすことが定められています。

4.最後に
 結論として、法的には派遣切りとは労働者派遣契約の中途解除であるということがわかりました。つまり派遣切りの主体は派遣先と派遣元であって、派遣労働者の解雇はまた別の問題であるということです。
 今回の検討を通じて感じたのは、法的な責任という観点からは、(この前提が大事)法律構造に問題があっても契約通り(そして目的どおり雇用の調整弁として)派遣労働者を受け入れてきた派遣先には、瑕疵はあまり認められないということでした(もちろん、道義的な問題や派遣元との力関係に基づく諸問題についてはあるでしょう)。
 それが、年越し派遣村を通じた報道等によって歪んだ報道になっていたこと。
 メディアリテラシーという観点からも、法律を学ぶものとして(法的な)真実をきちんと見極めていきたいと思います。
 そして(もちろんですが)現実社会に存在する問題点とを結びつけていく(言うまでもなく派遣切りの契約主体に派遣労働者がいないとはいえ、当該契約解除が派遣労働者の生活が危機にあることと直結しています)問題意識を持っていきたいとも思います。

tag : 派遣切り 厚生労働省 派遣労働者をとりまく法的関係 メディアリテラシー

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大学卒業後、銀行・官庁勤務を経て、社会人大学院生となる。
環境問題にかかる税金や賦課金制度について研究しています。

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